Arsaのブログ

~ リネ2ライフを徒然なるままに綴る日記 ~

4. 生命

アインハザードとグランカインによって生み出された『摂理』の中心にあったのは、水、火、風、大地であった。これらに光と闇の要素が加わることで、世界はより高度な複雑さを手に入れ、それはその後に創造される『生命』の多様性を刺激した。


この頃になると、アインハザードとグランカインが介入せずとも、世界は美しい循環を見せるまでに成熟していた。ふたりはそれを『自然』と名付け、森羅万象の苗床とした。


アインハザードは、次に『生命の創造』に取り掛かった。しかし、創造の神である彼女をもってしても、複雑な生命を創造することは容易ではなかった。



『自然』が見せる循環も確かに複雑なものではあったが、その複雑さは、あくまで外的なインタラクションの中に存在するものであり、それぞれのファクターは、至極単純なものであった-例えば、水分子が1つの酸素原子と2つの水素原子からなるように-。


『生命の創造』は、言うなれば、一個体の中に自然を構築し循環させるような緻密な設計を要する作業であった。



そこで、アインハザードは、まず比較的単純な『植物』から創造することにした。炭水化物を中心に分子を集め、それらをより合わせて繊維を創り、さらにその繊維をさらに太く束ねる事で1本の苗木を創り、最後に『生存』と『癒し』の意思を与え、大地に植えた。
自然のエネルギーを充分に浴びて育った最初の樹木は、やがて花を咲かせ結実し、種を飛ばすことで、瞬く間に世界を緑で覆い尽くした。


風に乗って世界中に広がった植物たちは、大地に根を下ろし、雨と陽(火)によって育まれ、闇の冷たさで鍛えられた。アインハザードの創造とグランカインの破壊が生み出した多様な自然環境の中で適者生存の原理にさらされる事で、植物たちもまた多様性を増し、より高度な植物へと進化していったのである。


この最初の樹木は、後に『世界樹』と呼ばれ、アデン大陸の象徴となるのだが、それはまだ先の話である。



次にアインハザードは、より高度な生命、『動物』を創ることにした。
試行錯誤と幾度かの失敗を重ね、彼女はついにリン脂質の二重膜で作った小さな袋の内側に、完全なる自然の循環を再現することに成功した。小さくはあったが、それはまさに生命であった。


アインハザードは、この目に見えぬほど小さな袋状の生命を『細胞』と名付けたが、細胞はあまりに小さく脆弱であったため、『生存』の意思すらも与える事が出来なかった。
そこで、彼女は一握りの細胞を束ねる事で、大きく強い個体を創り出し、そこに『生存』と『繁栄』の意思を植え付けたのであった。


これが全ての『動物』の起源である。
この生命は、数十億個の細胞を構成要素とするため、その進化の過程で、植物とは比べものにならない程の、驚くべき多様性を見せた。


こうして地上には、鳥の歌声や肉食動物の咆吼、大地を駆ける蹄の音など、様々な音に溢れた。


アインハザードは、特に鳥たちの歌声を好んだ。

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